クニちゃん
(クニちゃん)「山廃」っていう言葉もよく聞くけれど、どんな意味なんですか?


酒仙人

なかなか良い質問じゃのぉ~。前号(https://www.sake-sennin.jp/archives/3784)で「生もと」について話をしたが、その続きをいたそう。今回は現代の一般的な手法「速醸(そくじょう)もと」と「生もと」、そして「生もと仕込み」「山廃(やまはい)仕込み」について、少し詳しく学んでもらうぞよ。

日本酒の製造工程は多岐にわたるが、その中でも「酒母造り」は出来上がりの日本酒の味わいを左右する非常に重要な工程なんじゃ。酒母造りは、アルコール発酵に必要な酵母を大量に培養することが最大の目的じゃから、酒母造りの工程では、酵母が増殖しやすいように「酸性」の環境にしなければならん。そのやり方は大きく2つに分けられるんじゃよ。

一つは液体状の乳酸を加える手法。これは「速醸系酒母」と言うて、現代では一般的な手法じゃな。もう一つは蔵内に生息する乳酸菌を取り込む手法で、これが「生もと系酒母」じゃ。さらに、生酛系酒母は「生もと仕込み」と「山廃仕込み」に分かれておる。

酒母造りでは、まず200ℓの程度の小さなタンクに蒸米(酒母米)と麹(酒母麹)、水を入れて酵母を育てる環境を整える。そして、酵母を投入する前に、蒸米をすりつぶす手法を「生もと仕込み」、すりつぶす作業をしないのを「山廃仕込み」と呼ぶのじゃ。明治時代までは、すべての日本酒は「生もと仕込み」で造られておった。なぜなら昔は精米技術が未発達で、米がなかなか溶けず、米が溶けるまでに雑菌が繁殖するリスクが高まるから、それを避けるために蒸米をすり潰して酒母を造っておった。この作業は「山卸し(もと摺り)」と呼ばれ、重要な工程だったのじゃよ。

山卸しの作業は重労働だった

しかし、山卸しは重労働であったから、明治に開設された国立醸造試験場では、その重労働をなくすために、さまざまな検証実験を行ったのじゃ。そして、酒造好適米の登場、精米機の発達等により、「山卸し」の必要性が薄れたとの説を発表。その結果、多くの蔵元が「山卸し」をしなくなったんじゃ。その手法を略して「山(卸し)廃(止)」と呼び、巷には「生もと仕込み」の日本酒と「山廃仕込み」の日本酒が出回るようになった。

両者の味わいの違いについては、「酒母は醪の7%程度だからほとんど変わらない」という意見と、「すり潰すことで環境が変わり味わいも変わっていく」という意見に分かれておるぞよ。ただし、どちらも乳酸菌を使う影響で、濃醇な酒質になることには変わりない。では、生酛仕込みと山廃仕込みで味わいは変わるかの? 皆の衆もぜひご自身で体感してみるとよかろう。

生酛について深く学べるセミナーを12月7日(土)に開催します。
詳しくはコチラ ⇒⇒ https://academy.fbo.or.jp/?p=7191       

■参考 『酒仙人直伝 よくわかる日本酒』(NPO法人FBO)

【注意】
・記事、データ等の著作権その他一切の権利はNPO法人FBOに帰属します。

・記事・データ等の正確性については万全を期しておりますが、当該記事・データ等の利用により生じた不利益や問題等について当会は責任を負うものではありません。
・記事・データ等は予告なく変更する場合がありますのでご了承ください