2014年6月

1.隣の国、韓国について

韓国の人口は、約5,000万人(2012年現在)。国土面積は日本の四分の一程度なので、人口密度の高さがお判り頂けると思います。民族別では韓国人がほぼすべて。韓国人は単一民族であることに誇りを持っています。宗教別では、仏教(約23%)、プロテスタント(約18%)、カトリック(約11%)、その他(儒教など)、無宗教(約46%)で構成されています。日本と比べるとキリスト教徒が多いのもひとつの特徴になりましょう(夜のソウルを見ると町の至る所で赤い十字架が見かけられます)。また、韓国は儒教の国と呼ばれるほど、社会・文化に儒教の影響を色濃く受けており、使用言語は韓流ドラマでおなじみの韓国語が使用されています。 日韓における人の往来は、経済関係の緊密化や青少年交流、地方交流の拡充等により着実に増加しており、2010年に相互往来者数は500万人を突破しました。2013年は、前年より訪日韓国人数が増加した一方、訪韓日本人数は減少し、相互往来者数も減少しましたが、規模としては過去3番目に多い約520万人に達しています。 韓国といえば、韓流ドラマが頭に浮かぶ方々も多いことでしょう。ドラマを通じて、多くの日本人が、韓国の芸能・文化・歴史に触れ、遠かった隣国が一気に身近な存在になったかと思います。もちろん韓国でも1998年の日本文化開放以来、日本が身近になってきています。

 
2食を通じて健康に気を使う韓国人

「薬食同源」をコンセプトとした韓国料理の数々

次に韓国人の食に対する考え方をご紹介します。韓国人は、昔より飲食を通じてコミュニケーションを図り、人間関係を大切にする文化を持っています。一人で食事を取ることを好まず、他人と一緒に食事をし、会話を楽しむ習慣を持ちます。 また「薬食同源」の食観念のもと、食事と健康は密接な関係があり、すべての食事は体の調和を図る薬だという意識が食生活の根底にあるため、食事と健康に対して非常に高い関心を示します。その表れとして、韓国では「ウェルビーイング(Well-being)」がブームとなっています。これは健康で豊か、かつ美しい人生を営む新しいライフスタイルを意味しています。また有機農法で栽培された野菜など、身体によい食べ物には目がないのも特徴で、これにより伝統食への回帰も高まっているようです(さらにはスローフードスタイルも人気です)。日常の食事は1日3食(夜がメイン)で、家庭での外食機会は、都市を中心に増大しています。さらに旅先では食事をたくさん食べて楽しむのも韓国人の特徴といえるでしょう。

 
3.世界有数の酒類消費国、韓国

ビールと焼酎を割ったソメック

新入生歓迎会、忘年会、新年会、歓送別会など、大勢が集まる特別な席には日本同様に酒類が欠かせないのが韓国。また、韓国ドラマや映画でも酒杯を酌み交わすシーンがよく登場するように、普段の生活の中でも様々な出来事と共にお酒が飲まれます。韓国人1人あたりのアルコール消費量は、世界第13位(2011年WHO調べ)ですが、焼酎やウイスキーといったアルコール度数の高い酒類に限っては、OECD加盟国中、何と1位となっています(昔からの接待の飲酒文化による影響が大きいと考えられます)。

最近では若者と女性層の飲酒が増加してきました。スッキリとしたなめらか味わいを好む若者や女性は、韓国に低アルコール焼酎ブームを引き起こし、従来の25度製品から、19度~16.8度の製品を一般化させました(メーカーにより異なりますが)。また「ウェルビーイング」と甘いものを好む食習慣により、マッコリとワインの普及が急激に進みました。さらに、日常的にビールを楽しむ文化が広まり、チキンとビール(韓国語メッジュ)の合成新造語である“チメック”や、焼酎(韓国語ソジュ)とビール(韓国語メッジュ)の合成新造語である“ソメック”という飲み方もブームになっています。

韓国の世論調査機関trendmonitorの首都圏在住成人男女1000人を対象にした2013年度の調査によると好きな酒類はビール(86.1%)、焼酎(67.9%)、マッコリ(43.9%)、ワイン(31.6%)、低アルコール酒(24.2%)、洋酒(19.9%)、カクテル(13.4%)となりました(複数選択可)。やはり大衆酒である焼酎の比率は高いですが、ビールやワインなどの低アルコール系の人気が高くなっているのも現代社会の傾向といえるでしょう。

また、若者を中心に日本酒の人気もトレンド化しつつあります。焼酎よりアルコール度数が低く、なめらかな飲み口は女性にも人気です。

 
4.韓国における日本酒事情


韓国の関税庁によると、2012年の日本酒輸入量は前年比106%と伸長しています。また韓国内の輸入業者は60社程存在し、1000種類以上の日本酒が輸入されていると言われています。しかし、輸入量に比べると輸入額はそれほど伸びてはいません。これは韓国の消費者が低価格の日本酒を好んでいるからと言われています。韓国の主要日刊紙朝鮮日報にも報道されましたが、韓国内で人気のある久保田千寿は酒販店で4万~6万ウォン(日本円で約4000~6000円)、久保田萬寿は15万~19万ウォン(日本円で約1万5000~1万9000円)。ソウルの居酒屋では、久保田千寿は7万~10万ウォン(日本円で約7000~1万円)、久保田萬寿は22万~25万ウォン(日本円で約2万2000~2万5000円)程度となりますが、高級和食店になると久保田萬寿が40万ウォン(約4万円)するところもある程です(すべて720mlサイズとして)。

また韓国では手頃な価格で飲める紙パック日本酒も人気で「がんばれ!お父ちゃん!」という銘柄を結構見かけます。この「がんばれお父ちゃん(900ml)」も酒販店では、1万5000~1万8000ウォン(日本円で約1500~1800円)、居酒屋では2万5000~4万5000ウォン(日本円で約2500~4500円)となり、他酒類から比べると決して安いとは言えません。このように韓国で日本酒の価格が高くなるのは、複雑な流通の仕組みと店舗での利益率の高さが原因となります(韓国での日本酒の税率は68%)。今後、日本酒を普及させるためには、この流通の仕組みの改善と、各店舗における良心的な値付けが課題となるでしょう。

現在、韓国内では日本酒が飲める和食系の店舗が30,000店以上ありますが、リーズナブルな居酒屋業態が多く、主要顧客である20~30代の若者からすると、日本酒は値段が高く、飲むとしても安価の紙パックに入ったものが主流になります。但し、色々な日本酒を飲んでみたいというニーズは高くなっているので、これからは「ただ安い」、「ただ高い」だけでなく、価格競争力のある日本酒の開発と普及が鍵になることでしょう。

 
5.韓国における日本酒の未来

和食の普及と居酒屋業態の急激な成長、それに伴って日本からさまざまな業態のレストランが進出している韓国。これからますます日本酒の需要は伸びると予想します。しかし、そのためには乗り越えなければならない課題も存在します。まず韓国では低アルコール酒(醸造酒)のブームに伴い、ワイン需要が急激に伸びましたが、流通や各店舗における販売価格が高すぎたため、消費者がついてこれず、ワイン消費は急激に減少しました(酒販店における購入率と個人消費は多少増加しましたが)。日本酒も同じ轍を踏まないように、業界関係者全員が努力を行わなければならないでしょう。

いずれにしても、韓国における日本酒はこれからです。今後3~4年間は居酒屋の発展と共に日本酒の需要も伸びると思われます。しかし、その後は量の成長に伴う質の成長が求められます。合理的な値段かつ質の高い日本酒の普及とともに、販売する店舗でも日本酒についての正しい知識を持ち、適正な保存管理を行い、適した飲用温度、酒器、料理など、サービス部門を強化する必要があります(もちろん流通構造も改善しなければならないですが)。

日本と韓国の食文化や食習慣は似通った所が多いと感じています。現在は歴史問題でギクシャクしていますが、日本酒や食を通じながら、互いの文化を尊重し、両国の友好を計っていくことを「唎酒師」、「日本酒学講師」の一人として目指していきたいと思います。

<参考文献>
・朝鮮日報
・日本酒輸出ハンドブック~韓国編~ (日本貿易振興機構 農林水産・食品部、国税庁 酒税課)


レポート:洪 暎勛(HONG YOUNG HUN)
唎酒師、日本酒学講師
日本鳥取県庁と駐神戸大韓民国総領事館勤務。現在、韓国の外食コンサルティング企業であるRGM CONSULTINGの部長。日本酒普及のため、韓国で日本酒プロモーションのコンサルティング及び教育を行う。