店主 宮下 祐輔 氏
1978 年静岡県生まれ。唎酒師、酒匠。一般企業に勤めながら、2011 年「ふしきの」を神楽坂に開業。

燗番 多田 正樹 氏
1969年島根県生まれ。唎酒師。フレンチや中国料理店などのレストランサービス、2000年〜’11年、京王プラザホテルの日本酒バー「天乃川」勤務を経て現職に。

2人の唎酒師がカウンターでもてなす。

靴を脱いであがり、栗の木のカウンターに腰を落ち着けると、2 人のもてなしびとがお出迎え。ここは飲食店の激戦区、神楽坂の本多横丁。2011 年9 月開業、和酒会席「ふしきの」の店主、宮下祐輔氏は、唎酒師と酒匠の資格を持ち、茶道もたしなみますが、実は一般企業の現役会社員。学生時代に京都の料亭で接客のアルバイトを経験、お客様に提供する料理とともに器も記録されているのを目にし、器の世界に惹かれ、いつかは自分の好きな器で料理とお酒を提供する店を開きたいと考えるようになったそうです。

「私は主に器を選び、サービスの補佐として立ち、お酒のサービスと料理はプロに任せています」(宮下氏)

並んで立つのは“燗番”の多田正樹氏。京王プラザホテルの日本酒バー「天乃川」に長年勤務、お燗名人と呼ばれた人物であり、二人はFBO の唎酒師関連の場で知り合ったそうです。そして、カウンターからは見えませんが、厨房で料理を担当するのは、宮下氏のアルバイト先の料亭で当時、料理修業中だった荒巻吉男氏。「彼が料理長になってくれなければこの店はやっていなかった」と言うほど信頼を寄せています。

店名の「ふしきの」とは、千利休の言葉で「不思議」、また禅の初祖の達磨が言ったとされる「不識」を意味し、つまり知られざるもの、思いがけないものとの出会いを提供したいという店主の思いが込められています。

カウンター9 席のみの室内は、ある種、茶室のようなミニマムなしつらえ。2 人の背後の作りつけの棚に大量の器を収納していますが、木の扉ですべて隠れているので、すっきりシンプル、それゆえ、テーブルに並ぶ器と料理がより一層映えます。

定番料理の一つ「鯖寿司」。寿司の熟成度にもよるが、今日はあまり進んでいないので、合わせる日本酒は生酛ブレンドのまろやかな「天穏純米酒」(島根/板倉酒造)を50°Cのお燗で。

季節料理「稚鮎の木の芽炊き」。日本酒は「純米酒 秘傳」(広島/竹鶴酒造)、こちらもやや熱めのお燗で。魚の内臓の苦みをほど良くやわらげ、アメ炊きの甘さを流しつつ、心地良い余韻が味わえる。

店内に設けたコレクション棚には、辻村史朗氏や息子の唯氏、塊氏ら50 名ほどの作家ものの酒器が並ぶ。実際に店の営業で使用しているもので、また、店内とインターネット両方で販売も行っている。

東京都新宿区神楽坂4-3 TK ビル2F
☎ 03-3269-4556
18:30 〜23:00(最終入店21:00)
毎月1 〜5 日はバー営業(18:00 〜深夜)
日・祝休
料理・酒おまかせコース 1 万5,000 円(料理のみ8,400 円)
カウンター9 席
http://www.fushikino.com

NPO法人FBO(料飲専門家団体連合会) 会報誌「もてなしびと」2013.8掲載より一部抜粋