日本酒の造り方 -日本酒 知る・学ぶ-


1.原料処理

精米

原料の玄米の外側部分には、ビタミンやタンパク質、脂質が多く含まれており、これらは製造工程において酵母の働きを過剰に促進させてしまい、香味のバランスを悪くしたり、雑味の多い味わいにしたりします。そこで、精米と呼ばれる不必要な部分を削り取る作業が行われます。

枯らし

精米されたばかりの米は、摩擦によってかなりの熱を帯びています。また、精米中に発生する熱で、米の中の水分も奪われています。このままの不安定な米の状態では次の工程に移ることができません。よって、米の品温を下げることと、米の内部の水分を均一化するために2 週間から3 週間の間、冷暗所で保管します。これを枯らしといいます。

洗米

精米が終わると、次に洗米と呼ばれる米を洗う作業が行われます。洗米の目的は、白米の表面に残っている糠や米くずを洗い流すことです。
洗米時に米は1~2%磨耗すると共に水分も吸収するため、吸水率が品質に大きく影響するといわれる吟醸酒などの仕込みの際には、細心の注意を払いながら洗米が行われます。

漬漬

米に水を吸わせる時間で品質が決まるという杜氏もいる重要な工程です。浸漬の目的は、必要な水分を米に吸収させることです。一般的な浸漬の手順としては、洗米を終えた白米を直ちに浸漬タンクに移し、新しい水に取り換えて目的とする量を米に浸透させます。
浸漬用水の水温は10 ~ 15°Cが一般的ですが、水温が低いほど吸水が遅いので大吟醸用米などの場合は、冷たい水を使用し、吸水のコントロールをしやすくします。

蒸し

日本酒造りでは、米は炊かずに蒸されます。蒸すことの目的は水切りを終えて、適度に水を吸わせた生米を、蒸気で加熱することによって、米の生デンプンをα化し、麹菌の生産する糖化酵素の作用を受けやすくするために行います(炊くのでは必要以上の水分を吸いすぎる)。
出来上がりの蒸米は、さばけ(手ざわり)が良く、外側が硬く、内側が柔らかいものが良いとされます。

放冷

蒸米は、麹米、酒母用米、掛米として使用されます。それぞれが使用目的に応じた温度にまで冷まされます。昔ながらのむしろの上に広げて外気で自然冷却する方法や、ベルトコンベアの上を移動しながら、ファンで冷やす方法もあります。

2.米麹(製麹と麹造り)

製麹

日本酒造りでは、「麹」造りのことを製麹(せいぎく)と呼び、昔から「一麹、二酛、三造り」といわれ、日本酒造りにおいて最も重要な工程だとされてきました。また、特定名称酒を名乗る為には、使用する総米量に対して、麹米の使用割合が15%以上と定められています(通常、麹米の割合は20%程度であることが多い)。
製麹は、いわゆる蒸し米にカビを繁殖させる作業なので、高温の環境で行わなければなりません。製麹を行う作業部屋を麹室(こうじむろ)と呼び、製麹の完成までには、およそ48 時間(2 日間)も費やします。

3.酒母(酛)造り

第一段階

「酒母」造りの目的は、アルコール発酵に必要な酵母を大量に培養することです。
酵母を培養するために、蒸米、麹、水を200kg 程度のタンクに投入することから酒母(酛)造りは始まります。
酵母は、糖分をアルコールと炭酸ガスに変える(アルコール発酵)働きをする微生物であり、酵母を大量に培養しなければ、アルコール飲料である日本酒はできません(尚、酒母造りの最中でもアルコール発酵はおこり、出来上がりの酒母のアルコール度数は15%程度となります)。なお、酒母用米を磨り潰したものが「生酛仕込み」磨り潰さないものが「山廃仕込み」となります。

第二段階

酒母造りは、乳酸をどのように得るかによって以下の2つに分けられます。

速醸系酒母
最初の段階で、液体状の醸造用乳酸を加え、素早くタンク内を酸性にする方法。1910(明治43)年に国立醸造試験所で開発された手法です。

生酛系酒母
蔵内に生息する乳酸菌を取り込み、繁殖させて乳酸を得る方法。顕微鏡もなく、微生物の存在すらも確認できなかったはるか昔から行われてきた手法です。

第三段階

様々な酵母がその使用用途により使い分けられます。また、各蔵や各県で新しい酵母の開発も進んでおり、アルコール度数の低い酒を造る酵母、糖分を残さず辛口の酒を造る酵母と、新しい特徴を持つ酵母はまだまだ登場しそうです。
4.醪造り
「醪」造りに必要な「蒸米(掛米)」、「麹(掛麹)」、「水」、「酒母」の投入は、通常4 日間で3 回に分けて行われ、これを3 段仕込みと呼びます。
3回にわけて原料を投入する理由は、酵母を他の微生物から守るためです。
「醪」の原料となる「酒母」は「醪」に対して6%程度の量しかありません。酵母を他の微生物から守るために、酒母中は適度な酸性に保たれていますが、大量の米や水と混ぜ合わせると酸性が一気に薄まり、他の微生物が繁殖しやすい環境となってしまうため、3回に分けて原料の投入を行うのです。

初添え

醪造りの1 日目は、仕込みの1~3時間前、タンクに酒母、麹、水を入れておき(これを水麹といいます)、次に蒸米を投入します。これを初添えといいます。
初添えは、酒母が出来上がってから仕込みに用いるまでの期間に眠っていた酵母の活性をはかり、増殖させることが目的です。

踊り

初添えの翌日、1 日何もせずに酵母の増殖を待ちます。これを踊りといいます。踊りとは、発酵を始めた醪の泡が踊っているように見えるとか、階段の踊り場で一休みする様が語源だといわれます。

仲添えと留添え

踊りの翌日、さらに麹と蒸米、水を投入し、仲添えの翌日、最後の麹と蒸米、水を入れます。

発酵

三段仕込み後、本格的な発酵が始まります。通常、留添えの日を1日目と数えて、発酵の経過をチェックします。ここから2週間から1ヶ月近くかけて本格的な発酵(醸造)が始まります。
また、日本酒の発酵(醸造)形態は、「並行複発酵」という「糖化」と「アルコール発酵」を同じタンク内で行うことが特徴です。
この「並行複発酵」によって、アルコール度数が約17 ~ 20%近くと、醸造酒の中では非常に高くなります。発酵の経過は、泡の状態で確認されます。

5.絞りから瓶詰め

上槽

出来上がった醪を、酒粕と液体にわけるために搾ることを上槽といいます。上槽には様々な方法があり、それぞれ名称が異なります。

槽による搾り
槽と呼ばれる昔ながらの搾り機を使用した手法です。主に布でできた酒袋に醪を詰めて、槽の中に敷き詰めて、上からプレスして搾ります。
この時、最初に出てくる液体をあらばしりと呼び、香気の高い液体が得られます。あらばしりの後に出てくる液体は中取どり、中汲ぐみなどといわれますが、明確な規定はなく蔵元によって異なります。
袋吊り(雫酒、斗瓶囲い)と呼ばれる搾り
醪を酒袋に入れるまでは上記と同じですが、槽の中に敷き詰めずに首の部分を縛ってぶら下げ、自然にしたたり落ちる部分だけを集める手法を袋吊り、雫酒などと呼びます。

自動圧搾機による搾り
自動圧搾機は、アコーディオンのような形をしています。布をかぶせた板が何重にも連なっており、その中に醪を入れて押していくと、板が押されて、前方の槽口から液体が出てくる仕組みになります。

滓引き

上槽後の液体には、細かくなった米や酵母などの小さな固形物が浮遊しており、薄っすらと濁った状態になっています(この固形物を滓といいます)が、タンクの中でしばらく放置しておくと、滓が沈殿し上の部分が澄んできます。
タンクの下部には呑穴といわれる取り出し口が2つあり、上を上呑、下を下呑と呼び、通常は上呑の部分より酒を抽出します。この作業を滓引きといいます。この下呑の部分の滓を混ぜたものが滓酒や滓がらみといいます。

濾過

滓引きの後、残っている細かい滓を完全に除去するために濾過という清澄作業を行います。
濾過は、濾過機を使って行われます。その後に活性炭素を使用する場合があります。
濾過は清澄のために行われますが、ほかにも以下のような目的もあります。
1)脱色
濾過をする前の酒は、黄色がかった色調のものが多く、濾過を行うことで脱色することも目的になります。
2)香味の調整、異臭の除去
濾過をすることで、余分な香気成分や異臭要因、他にも不要な微生物を取り除くことができます。

1回目の火入れ

ここで火入れと呼ばれる低温加熱殺菌が行われます。60~65°C位の温度を30分程保つことで、酒内に残った酵素の働きをとめることと、火落ち菌などを殺菌することができます(酒内に酵素が残っていると、デンプンを糖化させる作用が続くために、時間が経つと甘く変化することがあります。また、主に上槽後に繁殖することが多い火落ち菌は、酒内に入り込み色調を白濁させたり、香味に異常を起したりするのでこの段階で殺菌されます)。

貯蔵

火入れをされた日本酒は、瓶に詰められるまでタンクの中で貯蔵されます。貯蔵を行う目的は、時間をおくことで、アルコールの分子と水の分子が融合し、まろやかな酒質にすることにあるといわれます。ただし、長時間貯蔵すればよいというわけでもないので、適切な時期を見極めることと、貯蔵中の適切な温度管理が重要になります。

調合

貯蔵される酒は、タンクごとに香味が違うので、品質を一定化するために調合(ブレンド)されます。この調合(ブレンド)は、各蔵元の香味に対するコンセプトが反映されるので、熟練の職人がテイスティングにより見極めて、厳密に行われます。

割水

割水とは、仕込み水を加えアルコール度数を調整する作業を指します。割水の目的は、酒質に合わせてアルコール度数と、香味のバランスを調整することです。通常の日本酒は、15%前後のアルコール度数に割水されることがほとんどですが、中には割水を一切行わずに商品化されるものもあり、これを原酒と呼びます。
原酒はアルコール度数が18%以上のものがあり、醸造酒の中で最も高いアルコール度数を誇ります。

濾過

割水後に貯蔵中に発生する滓を取り除くために再度濾過を行います。この濾過には活性炭素を使用するのが一般的です。

2回目の火入れと瓶詰め

割り水を終えたら、瓶詰めをして出荷されますが、この瓶詰め直前に2回目の火入れが行なわれます。火入れ後、瓶詰めされて出荷されます。2回目の火入れの方法は、火入れ機能を持った瓶詰め機を使用する場合と、瓶詰め後、60°C前後で湯煎する瓶燗方法があり、最近は瓶燗方法が増えてきました。

日本酒が出来る迄の工程





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